1973年、日本初の「子どもの本専門店」として名古屋に誕生したメルヘンハウス。半世紀近くにわたり子どもたちの心に寄り添い続けてきた。
2018年3月31日、一度その歴史に幕を下ろしながらも、熱い想いによって再始動したメルヘンハウスの、2代目店主・三輪丈太郎さんの挑戦に迫ります。
2014年メルヘンハウスに入社。経営改善できず、一度は閉店。

「当時のメルヘンハウスは、父が思い描いた理想郷とも言える場所でした。」
丈太郎さんが入社した2014年のメルヘンハウスは、60坪の広大な空間に3万冊もの児童書が並び、”ブッククラブ”の会員は全国に1.5万人いました。しかし、すでに赤字経営に陥っており、10名近くのスタッフを抱える中で改革は急務でした。

なんとか立て直したいと奔走しましたが、スタッフとのすれ違いもあり、店内には徐々に温度差が広がっていきました。
また、お勧めの絵本を教えるも店内で購入するのではなく、「目の前でAmazonの注文完了画面を見せられる。」ショッキングな時代の変化に直面し、人間関係の希薄さを感じたという。「ここじゃなくても買える」という空気が、かつての賑わいを静かに奪っていきました。
どうにか続けたくても、今のままではもう前に進めない。一度すべてを壊すしかない。経営的な理由からメルヘンハウスは45年の歴史に幕を閉じました。
3年半の空白。やっぱりメルヘンハウスを再開したい。

メルヘンハウス閉店後、丈太郎さんはサラリーマンとして別の職に就きました。しかし、体質が合わず、体重が激減するなど心身ともに不調に。残された選択肢は、ミュージシャン活動の再開か、それともメルヘンハウスの再開か。
やはりメルヘンハウスへの想いは断ち切れませんでした。
2018年7月、丈太郎さんはFacebook上でメルヘンハウス再開への熱い想いを投稿します。その投稿は、大きな反響を呼び、絵本関連の仕事を依頼されるようになりました。
講演会や絵本の選書、移動販売といったメルヘンハウス再開に向けた活動する傍ら、家族養うためコールセンターで働くこと3年半。この準備期間を経て、丈太郎さんの情熱は再びメルヘンハウスの光を灯すことになります。
丈太郎さんが2020年5月にnoteで投稿した、メルヘンハウス再始動への熱い想いが詰まった記事です。こちらもぜひご覧ください。
新たなメルヘンハウスがはじまります!
https://note.com/meruhenhouse/n/n1ef3f402da76
再始動したメルヘンハウス コンセプトは「ユーザー」から「メンバー」へ

2021年8月、メルヘンハウスは再始動を果たしました。
長年に渡りミュージシャンとして音楽活動や、それに伴う様々なカルチャーなどに触れて培ってきた経験を活かし、独自のライブ感のある選書の提案やイベント企画などを、書店の既成概念に捉われることなく、自由な発想で積極的に活動しています。(HP引用)
新しいメルヘンハウスが掲げるコンセプトは、「ユーザーからメンバーへ」。お客さんがただ本を買うだけの「ユーザー」ではなく、メルヘンハウスを一緒に創っていく「メンバー」になってほしいという丈太郎さんの想いが込められています。

このコンセプトは、さまざまな形で実現されています。もともとお客さんだった積み木マイスターの方が講師となって「つみきイベント」を開催したり、絵本専門士の方が中心となり大人が自分のために絵本を楽しむ「大人絵本夜会」を開催している。
メルヘンハウスという場所を介して人と人が繋がり、共に文化を育むコミュニティの場へと進化を遂げているのです。
「この本、来たな」旬の絵本を発掘する独自の感性

右:どろぼうジャンボリ [ 阿部 結 ]
丈太郎さんの強みは、ミュージシャン時代に培われた独自の感性です。発売前の段階で「この本、来たな!」と感じる瞬間があると言います。
最近では、きくちちきさんの「ちょうちょ ちょうちょ」や阿部結さんの「どろぼうジャンボリ」に出合った時の感動を熱く語ってくれました。

良い絵本だと思ったら、躊躇なく出版社に問い合わせ、時には出版社が止めても大量に仕入れると言います。「魅力を伝えられれば、ちゃんと売れる」という信念のもと、自らの感性で選び抜いた本を、その熱量とメッセージを添えて届けます。
オンラインショップで本を購入してくれたお客さんには、丈太郎さんの手書きのメッセージカードが添えられていることも、その情熱の証です。
50歳での新たな挑戦。YouTubeで絵本を熱く語る
丈太郎さんの新たな挑戦は、メルヘンハウス公式YouTubeでの絵本紹介です。服部みれいさんとの「パンクな絵本紹介イベント」で「すごいトーク力」「才能だ」と褒められたことがきっかけだったという。

「基本的に褒められたことをやれば、うまくいくと思っている」という丈太郎さんは、そのわずか1カ月後には動画投稿を開始します。
Mac付属のiMovieから始まり、今ではAdobe Premiere Proも使いこなす丈太郎さん。当初は編集ソフトの使い方がわからず、コールセンターに何度も電話してサポートを受けながら、試行錯誤を重ねてきたと言います。
「誰もやっていないことをやる」
その信念のもと、トークだけで絵本の魅力を伝えるという独自のスタイルを確立しました。YouTubeの視聴者から「熱いトークで感動しました」というメッセージと共にオンラインショップでの本の購入に繋がった時、その熱い想いが確かに届いていることを実感したそうです。

すてきな三にんぐみ改訂版 [ トミー・ウンゲラー ]
~絵本BOX編集部コメント~

「絵本で世の中を変える」
そんな言葉を冗談ではなく、真剣に語る人がいることがどれだけ心強いことでしょう。
丈太郎さんは絵本について、「好きとか嫌いとかじゃないんですよ。僕の中ではあって当たり前のもの。だけれども、世間では絵本が身近にあること自体まだ少数派だと気づいたんです。絵本の普及活動をしなきゃいけない。」と話す姿から、強い使命感が伝わってきました。
そこには「絵本の力」を信じ、世の中を変えようとする元ミュージシャンの「パンクスピリット」がありました。
「変化の激しい時代」に挑戦し続ける熱い想いと行動力は、きっと1代目の魅力を引き継ぎながらも、違った音色と力強さで、世の中を変えていくのだと思います。
今の「メルヘンハウス」を創り上げた「丈太郎さんの経験と感性」から語られる言葉で、今日もワクワクを伝え、誰かの心を動かしています。1を聞いたら10を答えてくれる、そんな優しい愛に溢れるお店・丈太郎さんに、ぜひ会いに行ってみてください。

名古屋が遠いという方は、YouTubeで熱いトークを先に体験してみるのも良いかもしれませんね!
店舗名 | 内容 |
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住所 | 愛知県名古屋市千種区山門町1-11 覚王山コーポレーション1階3号 |
電話 | 052-887-2566 |
営業時間 | 10:00〜17:00 |
定休日 | 第1・第3日月 |
アクセス | 地下鉄東山線 覚王山駅1出口 徒歩約4分 |
meruhenhouse | |
ホームページ | https://meruhenhouse.com/ |